土, 1月 6, 2007
Macro Economics
正月休みを利用して、『マクロ経済学 第2版』 吉川 洋著 (岩波書店)を読み始めた。昔試験対策に買ったままだった本を読むことにした理由は、新聞や雑誌を読んでいて、長期利率とか貿易収支がどうのって話しについて行きたいなと思ったことと、周りの友達が最近外国為替をやっている所為でマクロに興味がわいてきたのと、経営コンサルタントっていうくらいなら経済学も押さえときたいなと思っていたのが重なったから。
この本は、理論と具体例を織り交ぜながら平易な言葉で展開されるので、理解しやすい。ただ理論面がさらっと書きすぎていて、一度ひっかかると、読み返したり、紙に書いて考えたりしないといけない。その分コンパクトなので、よしとしましょう。本当は、理論の大事なところだけ、式と説明で別表にまとめといてくれたりすると、さらに便利なのだけど。第1章国民所得統計、第2章GDPの決定、第3章資産市場と楽しく読み進み中。
こういう教科書的な本を読むと、付加価値、リスク、ストック/フローとか普段の生活でふれる概念に関するアカデミックな知識が得られる。そういうベーシックなものの考え方を学んだ上で、GDPに各需要要素が与える影響、債権・株式の論理価格とか、インフレ・デフレの影響とか詳細な知識をざっくり知っていくといい感じ。
久々に学校の勉強みたいで楽しい。目次をじっくり読んで、図表にまず目を通して、分かったこと、分からないことをノートにまとめながら勉強していくことにしよう。この本の次は、ミクロ経済と金融かな。
金, 5月 19, 2006
On the origin of Web 2.0 by means of natural selection
梅田望夫の『ウェブ進化論』 を買ってみた。夕飯を食べに行くときに、読むものがなかったから。これが、読み始めるとなかなかおもしろいわけです。オープンソース、チープ革命、インターネットの3要素の周りで話が展開されていって、グーグル、ロングテール 、ブログとかについて今後こうなるよみたいなことを示していくわけなのね。読みやすいから、疲れた頭にぴったりです。
イチバン面白かったのは、Google内でのコミュニケーションの話。彼らはBlogやWikiで情報を共有し、「情報自身に淘汰を起こさせる」らしい。つまり、まずは情報をできるだけオープンにして、必要な情報だけピックアップするみたい。これって、インターネットの常識であり、企業社会の非常識であり、民主的で効率的なやりかただと思った。実は情報の氾濫を「情報自身で淘汰」できる仕組みがあって、初めて膨大な情報が意味を持つのだなってことが、この「ウェブ進化論」を読んでわかった。収穫です。
そこで、「情報」についてもう一度考えてみた。
情報って伝達することで価値を減じず、むしろ他の情報と結びついて新たな価値を生むわけです(by Lawrence Lessig )。情報の表現コストは小さくなればなるほど、ヒトの頭から世の中に飛び出す情報量は増える。情報の伝達コストが小さくなればなるほど、情報同士がくっつ いてより大きな価値のタネがどんどん生み出されていく。そして、情報の検索コストが小さくなればなるほど、情報の潜在的な価値が顕在化する。表現、伝達、検索の3つのコストが小さくなったとき、分散された情報は中央集権された情報以上の価値を生み出す。この知識のCreative Commons、表現の自由の産物がInternetの価値の源泉なわけなのでしょう。
広い世の中でなりたつことが、たとえば一つの会社のなかでなりたつかというと、答えは”YES”、かも。つまり、 会社内でCreative Commonsを作り上げることで、その会社全体が生み出す価値ってもっともっと大きくすることができるんじゃないだろか。とある会社のなかにいるヒトの すべての知恵が、瞬時にコストゼロであつまったら、いいアイデアがさくさく生まれるのじゃないだろか。そして、その良いアイデアは付加価値となって、世間 に便益を与えて、企業はその対価(おかね)をもらえるんじゃないだろか。
そのために今はやりのKM(Knowledge Management)が必要になる。それって、BlogとWikiと社内用検索エンジン(社内用Google )とRSSリーダーがあればできちゃうはずだよ。だって、インターネットでできてるんだから。企業が大金を出して買うたぐいのKM専用ツールなんて、ほとんどの場合必要ない。そういう専用ツールはたいてい中央集権的な情報管理体制になっていて、情報表現・伝達コストが大きい。あと、たいていそういう専用ツールはインターフェースがよくなかったりもする。ま、僕の会社が使ってるひどいKMの仕組みの所為で、専用ツールを不当に低く評価してるのは認めるけどね。
さらに細かい話をすると、KM含め本当はERPとかまで全部アプリケーションサーバーみたいので運営したらいいんじゃないかな。各企業はサービス提供会社から、サービスを買うの。KMのサービスとかね。ネットワークの高速化とハードウェアの処理速度向上、高級言語の存在はそれを可能にする。そして、サービス提供会社は、ハード、ソフト、ネットワークをコントロールしながら、フレキシブルなサービスを低コストで提供できるはず(by Paul Graham )。あとは、各企業が基幹情報を外部委託するようになるかどうかが問題だ。
「情報」から、Creative Commonsへ、そしてネットワークサービスへと、僕の思考は漂っていったのです。
Googleといえば、16日火曜日のDILBERT が“Don’t be evil” ネタで結構おもしろかったりした。ま、中国Googleの検閲問題 とかいろいろあったりするし。そういう意味で、この本が(少なくも僕の読んだ144ページまでは)、Googleを手放しでほめてるのはどうなんだろなんて思ってみたりして。
月, 11月 14, 2005
Truman Capote, “In Cold Blood”
カポーティの『冷血』を読んだ。カンザスで実際に起きた殺人事件についての、ノンフィクション・ノベル。犯人、被害者、彼らを取り巻く人々の感情の描写がリアルで豊か。事実の凄みと小説の豊かさが共存してる。
アメリカの社会階層、殺人犯の感情の動き、死刑囚と接する人々の心情といったものが生き生きと描写されている。そして、何よりもすごいのが小説として面白 いところ。これがすべて虚構の世界の話でも十分に面白い。現実をここまで豊かに描けるって、カポーティの才能はとてつもないんだと思う。
現実を題材に小説を書きました、って聞いたら普通だったら身構えてしまうと思う。だって、描く題材に困った作家が世間のいやらしい野次馬根性を当てにして 作品を仕上げたみたいだから。Aoyama Book Centerで見かけたこの本がカポーティのものでなかったら、文章に目を通してすぐに心を奪われなかったら、僕はこの本を読まなかったと思う。
「冷酷な犯罪者に鉄槌を」でも、「死刑制度反対」でもない、真実が描かれていると思う。そして、犯人の一人を妙にかわいそうに感じてしまう。それは、カポーティがそういう書き方をしているせいもあるのだろうけど。
矛盾とか迷いをちゃんと文章に込める作家ってすばらしい。もちろん、洗練されている必要はあるけれど。
日, 11月 13, 2005
Vladimir Nabocov, “Speak Memory: A Memoir”
ウラジミール・ナボコフの『ナボコフ自伝 記憶よ語れ』を読み終えた。ロシアで幸せに暮らしていた幼少時代から、亡命生活までが綴られている。
ナボコフって面白いことを言う。彼のものの捉え方って、忘れてたことを思い出させてくれたり、違う方向から光を当ててくれる。
- 「学問研究といっても、所詮は楽しみを与えるだけのものなのだ。」
- 「私たちの人生は2つの無限の闇の境を走っている一条の光線にすぎない。」
- 「円は精神化するとらせんになる。円がほどけて、らせん形になると、悪循環から解放されるのだ。」
この人には、意地悪いくらい冷静な洞察力と、柔和な美しいものに対する愛情と、論理的な美意識が共存してる。親しみを感じるというわけではないけれど、不思議な魅力があるみたい。
木, 11月 10, 2005
Cornelius, “Point”
ずいぶん前に出たアルバムだけど、CorneliusのPoint (BBC Review)を買った。”Drop”, “Bird Watching At Inner Forest”, “Brazil”とかいい曲たくさん。アタマに残るフレーズの連なりでできる美しいメロディ。
この人の曲を聴いてると、余計なチカラが抜けてく。リラックスできる。なんか、アタマのマッサージみたい。ホントにだめになりそうなときは、この人の曲を聴きながらチンザノ飲んで、マルボロ吸ったら大丈夫になる。
さらっと肩肘張ってない感じなのに、いい曲ぞろい。こういうのって、格好いい。
土, 10月 29, 2005
Shimada Masahiko
島田雅彦の『退廃姉妹』を読み終えた。Aoyama Book Centerをうろうろしてたら、表紙に惹かれて。
目黒に住む美しい姉妹が戦後を生き抜いていく物語。その生き抜き方は退廃的。冷静な姉と、向こう見ずな妹。自由思想の英語教師と、愛国思想の国語教師。特攻帰りと、進駐軍。
戦後の人の心、世情ってものを、まるでその場にいたみたいに描写している。そして、この人が描く恋愛はリアルで、エロチックで、美しい。
島田雅彦作品を、もっと読んでみなくちゃ。早速Amazonで、 『預言者の名前 』、『ロココ町』を注文しちゃった。早く来るのが楽しみだ。